2022年08月19日

『経済数学の直感的方法 確率・統計編』長沼伸一郎

こちらは、現代経済学の直感的方法 の姉妹編というべきか。

オプション価格の公式を導いてノーベル経済学賞を受賞したブラック・ショールズ理論についての解説本だ。
というっても「直観的」に理解するために、平易な例えと単純化をしてくれている。
私のような文系人間にもなんとなくわかったような気にさせてくれる、不思議な著作だ。

ブラック・ショールズと言えばLTCMの経営に加わり、破綻したことで知られている。
LTCMの破綻を書いた本を以前読んだとき、ブラック・ショールズの印象は、「株の動きはランダム・ウォーク」ということが書かれており、それを元に株価の予想をして、結局破綻したというイメージだった。(LTCMは確かアービトラージ取引で利益を出していたのだが)。

ランダム・ウォークというのが、「結局株価の予想なんてできない」ということ。そんな理論を元に取引をしても結局価格の予測なんてできない。ノーベル賞を取った経済学者であっても。そういう印象だった。

長沼先生の書作からは、その間違った印象がぬぐいさられる。

  • 株の価格は、様々な社会情勢、無数の投資家による思惑によって、変化する。それはまるで空気中の粒子が空気の分子に跳ね返ってあちこち動く様、ランダム・ウォークと同じである
  • その分子(株価)は正規分布表という確率分布に従う
  • 将来株価は、トレンド+ランダムで決まる。この2つを分離する公式を求めた

  • 逆の値動きをする株を買うことで必ず(確率的に)利益を上げる取引ができる
  • それは2つの株によらず、ある商品とそのオプションの取引によっても可能となる

という、「夢のような」理論だった。
それにしても、何故LTCMが破綻したのかと言う疑問が残るが。

ともかく読み物として面白いだけではなく、数式も載っているにかかわらず、なんとなくその式がわかったような気にさせてくれる、長沼先生の力量は尊敬に値する。



posted by しもす at 23:30| Comment(0) | 読書

2022年08月13日

『僕が大切にしてきた仕事の超基本50』出口治明

本当にこの人の本は役に立つ。全て納得がいくし、ある程度は自分でも実践してきた経験がある。
よく「この本にもっと若い時に出合っていればよかった」という感想を述べる人がいるが、実際どうだろうか?
全く同じ内容ではないにせよ、本や、先輩や上司、講演などで似たようなことには絶対触れているはずである。
その時に、教訓やヒントを身に付けていないから、いつまでも「もっと早く・・」という感想になる。
それに、「もっと早くから出会っていれば」というのは、今読んでも手遅れというニュアンスもある。
そんなことはないはずだ。無意味な感想であり、褒め言葉である。

第1章 仕事を楽しむ
仕事は楽しくない、雑用でもゲーム化して判断力を磨く。
直観でいいからとにかく結論をだす。困ったらギャーと叫ぶ。

第3章 くよくよしない
仕事は6勝4敗でいい、苦い経験を糧とする
日本では失敗した人に投資しない、海外では失敗した人により投資する。

第4章 時間に追われない
考え抜いた後の「直観」を信じる、自己投資にあてる時間を最大化する
情報を発信し、直観を磨く

第5章 説得上手になる
数字、ファクト、ロジックで勝負する、数字(データ)を探す癖をつける、

第6章 部下の力を引き出す
失敗した経験こそ評価する、結論は最初に短く簡潔にまとめる
非力を認め虚勢を張らない、率先してフェアであろうとする

第7章
とりあえず行ってみてから考える、いつも好奇心に軸足を置く
相手へのリスペクトを大切にする、正攻法でやり抜いてから次を考える
迷ったら立ち止まって社会の利益を考える

全ての向上心ある人に捧げたい良本。




posted by しもす at 20:21| Comment(0) | 日常

2022年07月30日

『教育論の新常識』 松岡亮二

こういう人たちの本を読むと、批判ばかりするのではなく、政策立案者がなにゆえそういう選択肢しか取れなかったのか、直接きいてくれ、会うなり、電話するなりできるではないかと思う。

例えば消費税を財源にした、給付型奨学金の額であるが、給付額の段差を収入によって3段階にしていると批判する。段差を増やすか、連続的に減額するような設計にしないと、収入1円の差でも不公平になる。
こんな不公平は誰の目でも明らかだし、その不公平を推してまで3段階にする必要は全くない。他のメリットが見当たらない。こうう単純なミスとも思える政策を何故策定したのか是非聞いてほしいものだ。その結果を書き留めて欲しい。
それがないと政策立案者が政治家に振り回され、思い付きで政策を立案しているように見える。知識人のごもっともな理屈を並べられ、消化不良に終わる。

と、前半はそのような印象が強かったが、最後はこの松岡さんも政策に関わり、その実現に向けて努力していることが明かされていた。それに、行政の人たちが熱意を持って、教育を変えようとしているという現場の状況も伝えてくれる。
では、優秀な官僚が寝る間も惜しんで働いた結果が、どうしてこのようなみすぼらしい結果になるんだろうか?

老人が増えすぎて、老人福祉、医療、年金に予算を使うため、そもそも教育にかける予算が足りない?
教育格差が生まれ、公立の学校では質が低下し、政策が追いつかない?
教師の質が低下するとともに、忙しい、かつ英語やITなど教える内容が増え過ぎて教科の準備ができない?

それを包括的に即座に解決する方法はないだろうし、10年、20年後は何が正解になるかもわからない。
最終的な正解でないにしても、リカレント教育は一つの解だと思う。
そのためには学生時代は少なくとも、学習することが楽しいことであると学ぶべきだ。
学生の時には日本人は他の国に比べて学習時間が多いのに、大人の学習する時間は短いという。
変なトラウマや強制されてするものという変な刷り込みがされているのかもしれない。
それは悲しいことだ。

今日の日経にふるさと納税によって地方自治体の予算配分がバランス悪くなっていると書いてあったが、配布の問題だけではなく、努力して寄付金が増えた、小さい市町村が何に予算を使っているのかを紹介してほしい。その中で教育や子育てに成功した市町村があれば、予算と連動して教育の質を上げる事例が見られるのに。日本全国レベルに目に見える教育行政を期待するのは無理なんだから、小さい市町村が頑張って欲しい。

寄付金額と返礼品のランキングを報道するだけでなく。

posted by しもす at 16:06| Comment(0) | 教育