2021年03月07日

ワカタケル

『ワカタケル』池澤夏樹

小説を読むのは何年振りだろうか。最後に読んだ小説が何だったかも忘れてしまうくらい昔のことだった。
この小説は昨年、日経に連載されており、読んだり読まなかったりしていたものだ。
単行本出版でわかったことはだいたい3割くらいの後半の部分を読んでいたことになる。
と言っても、完結部は読んでいない。

古墳時代の頃を描いた小説というのも初めてのことだ。
漫画なら山岸涼子で読んでいた世界観である。

21代天皇と言われる雄略天皇の父がなくなってから話が始まる。
まずクニを引き継ぐために、親類や兄弟を殺す。この世界では政略で肉親を殺すことは悪ではない。
クニ治めのためには必然なことである。
政策を大王に進言する巫女、物の怪、先祖の霊。それが日常に跋扈する世界観が何とも言えずに爽快である。

戦地に向かう船の上や、死に逝くものたちへの手向けとして歌を詠む。
殺される身の女が、ワカタケルに歌を詠む。その歌が秀逸ということで死を免れる。
実に風流だ。
こんな世界観が他の世界史のどこにあろうか。
神話の世界と境の無い「史実」が存在する日本という国が本当に面白い。

posted by しもす at 00:00| Comment(0) | 読書