2021年12月31日

2021年心に残った本

2021年の読書は90冊とまあまあだったが、後半驚くほど失速した。
仕事が忙しいというのは言い訳で、努力が足りないのだと思う。

昨年に続き、今年心に残った本10冊を挙げてみる。読んだ順。

書名著者名
21 Lessonsユヴァル・ノア・ハラリ/著
13歳からのアート思考 末永幸歩/著
アフターデジタル藤井保文/著
まぐれナシーム・ニコラス・タレブ/著
Learn or Die西川徹/著
シン・ニホン安宅和人
レオナルド・ダ・ヴィンチウォルター・アイザックソン
2020年6月30日にまたここで会おう瀧本哲史
オードリータンの思考近藤弥生子
リベラルという病山口真由

思想書は少し控えめ。久しぶりのナシーム・タレブが面白い。今、『反脆弱性』を読もうと待ち構えている。日本人は、安宅和人、瀧本哲史、西川徹。西川氏はプリファードネットワークスの創業者だが、起業精神に溢れて読みごたえがある。プリファードネットワークスに比べれば、FacebookやTwitterなど企業価値など無いに等しい。この差が残念である。
レオナルド・ダ・ヴィンチは読みごたえがある。実は上巻300ページを読んだのみで、下巻は今手元にある。
『オードリータンの思考』彼女が自然にふるまっていることが善そのものであり、それを受け入れる台湾という政治の存在が面白い。山口真由は、中野信子と対談したり、美人だから話題になるのか?と勘ぐっていたのだが、著書はしっかりしていた。アメリカのリベラルの歴史がよくわかったし、どうして日本の野党が政権を取れないのかが理解できた。

来年は仕事に逃げずに、しっかりと読書しよう。





posted by しもす at 23:50| Comment(0) | 読書

2021年12月05日

SEは死滅する

日経コンピューター編集委員である、木村岳史 氏の名著。
IT技術者の必読書にしてほしい本だ。

この中で、「虚構の納得感」という言葉が出て来た。
システム開発工数を人月を示すことに対して使われた言葉である。
億単位のシステム開発工数の見積根拠として、納得の行く数字として、人月が使われている。
ただ、所詮、人月も受注額に合わせて作ることはできる。
本当の人月見積はするが、見積根拠としては変化させる。

思えば、「虚構の納得感」のために、技術者はどれだけ無駄な時間を費やしているのか。
「この資料では上が納得しない」というIT担当者。
でも、納得しない根拠を具体的に示すスキルはない。
経験のある技術者ならともかく、一般のベンダーは何が悪いのか理解できない。
経験のあると言っても、「どうやったらIT部長や役員が喜ぶ資料であるか」がわかる経験という意味で。

障害が発生すると、障害の原因となった、バグを修復することで障害はクローズする。
もう少し広く見ると、同じバグが他のコードに潜伏していなかを調査する必要もある。
さらに広げると、同じバグを発生させないように、設計書の書き方やレビューの方法を改善するというような、長期的な対策を含めることがある。長期的な対策は1つのバグを見ていても出てこないので、半年や1年に1回くらいのスパンで、複数の障害を振り返って見直すのが適切な対応と言える。
主に、類似のバグが他のコードに潜伏していないか、あるいはこれから設計・開発するシステムの類似のバグが入り込まないかを合わせて「再発防止策」と呼ぶ。

私の若い時は、障害はバグをクローズして終わりという無邪気な対応が発注者もベンダーも普通であったような気がする。近年では、プロジェクトマネジメントの手法も一般化して、「再発防止策」を障害発生からクローズまでのライフサイクルに取り入れる発注者は多い。現在担当しているお客様も、全ての障害に対して「再発防止策」を要求する。

日本人は他の民族よりも生真面目で一度やると決めたら、とことんやるように思える。

ところが、この「再発防止策」を立てる行為はベンダーにとってかなり負担が高い。もちろん、当然のように湧き上がる「再発防止策」はあるので、その場合は問題がない。しかしながら、そういうバグばかりではないのだ。
ところが、「生真面目」な発注者は全ての障害に対して再発防止策の回答を求めてくる。

しかも、本番障害であるならまだしも、開発の過程で発生する障害全てに求めてくるのだ。
この対策にかかる時間が半端ではない。発注者はこのことを知らないだろう。
それにかかるコストがどれだけ無駄になっているかを伝えたいが、恐らく理解してくれないだろう。
結論から言うと本当に対策すべき障害は開発中案件であれば1割程度。
それに対して真面目に再発防止を検討した方がよほど生産性が高い。

だから我々ベンダーはどうでもいい9割の再発防止策に対して、発注者が満足する作文をしているだけなのだ。
これこそ「虚構の満足感」のための無駄遣いと言える。

ちなみに正しい再発防止策の運用は、
@本番障害に対しては全て対策を取るべし
 (中には対策を取れないものもあるが、選別できないので、全量対象にするしかない)
A開発中の障害に対しては1割程度に対して対策を取るべし

ちなみに開発中は「障害」とは呼んではいけない。恐らく99%の人が障害と呼んでいるだろう。
私も呼んでいるが、そう呼ばないと言葉が通じないからである。
正しくは「不具合」である。本番「障害」でも業務影響がない場合は「不具合」でよい。

開発中のあるバグに対して、原因が外部設計書の不備であることが判明した。
この時、発注者の一人が「障害防止策として、全ての外部設計書を見直す必要はないか?」と言ってきた。
笑い話ではない。

漢字が苦手なら漢字の勉強だけをすればいい。
「止め」「撥ね」の間違いなら、間違い易い漢字だけを練習すればいい。
それが、対策というものである。
国語のテストの点数を上げるのに、1日8時間読書をしろと言っているようなものだ。

「じゃあ、設計全部止めて、3か月外部設計書見直せというのですか?」
と言いたいが、そういうことを言うと逆切れされて、下田をプロジェクトから外せと言われるだけ。
posted by しもす at 09:43| Comment(0) | IT業界

2021年12月04日

リスクの正体

『リスクの正体』神里達博

朝日新聞のコラムを集めた新書。
様々なリスクに関する事柄を集めており、学術的ではないので読みやすい。
2015年の事件で、杭工事のデータ偽装事件を取り上げていた。
データ偽装はモノづくり企業で多く発生した。
三菱電機、スズキ、タカタエアバッグなど多くの企業、
その度に「技術王国日本の信頼が揺らぐ」という副題が付いている。

社会に対して仕事を請け負って来た専門家が、経済的利益を増やすために信頼に背く行為を行う、
このようなプロの裏切りに対して、どう対処すべきか?著者は問いかける。

「プロフェッショナル」という言葉は、神からの召喚に対し、「その仕事を引き受けます」と
公言(profession)することに由来するという。
キリスト教世界では、職業を神との契約によるものだから、職業倫理に違反することは、神を裏切る行為である。
そこが一定の安全弁になっているはずだ。

ところが日本人の職業観には、神との契約という概念はない。
では日本人は何に対してプロの意識を持っているのだろうか?

それは「職人」の持つプライドや矜持ではないか。
それが今の世界では失われつつある。

では、それを取り戻すには?

著者の考えは、「利害関係を超えた「他者」に関心を持つこと、そして、その他社の良き仕事ぶりを見つけたら素直に敬意を表明することだ。人は理解され、尊敬されて初めて誇りを持てる。できれば、罰則や監視ではなく、知性と尊厳によって世界を変えて行きたい」

罰則や監視では解決できない。いくらでも抜け道はあるし、まして相手はプロ集団である。
プロと素人との良い関係は敬意から生まれるということを信じたい。





posted by しもす at 17:56| Comment(0) | 読書